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NekoUshiの音楽帖+α

ピアノを弾き散らかし、音楽を聴き散らかし、音楽と戯れています。

 

『指先から感じるドビュッシー』が届いた~♪♪

前からずっと読みたいと思っていた『指先から感じるドビュッシー』(青柳いづみこ、春秋社)が届きました。ドビュッシーのエキスパート、青柳いづみこ先生の読み応えのある本です(≧▽≦) 安川加寿子先生の門下生で、文筆業とピアニストの兼業で活躍されていることで有名ですね。帯に書いてあった紹介によりますと「19世紀末の美意識、作曲家が愛した絵画、文学、人など、作品の文化的背景を紹介し、その演奏技法を詳しく解説。自分...

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前からずっと読みたいと思っていた『指先から感じるドビュッシー』(青柳いづみこ、春秋社)が届きました。ドビュッシーのエキスパート、青柳いづみこ先生の読み応えのある本です(≧▽≦) 安川加寿子先生の門下生で、文筆業とピアニストの兼業で活躍されていることで有名ですね。
指先から感じるドビュッシー

帯に書いてあった紹介によりますと「19世紀末の美意識、作曲家が愛した絵画、文学、人など、作品の文化的背景を紹介し、その演奏技法を詳しく解説。自分で自分の解釈を選びとるための多角的レッスン」だそうですが、パラパラとめくってみら、まさにそんな感じでした。

取り上げられている曲は、

・アラベスク第1番
・アラベスク第2番

《映像》第1集より
・水の反映
・運動

・小さな黒人
・忘れられた映像

ドビュッシーのお引越し

《前奏曲集》第1巻より
・デルフの舞姫たち
・帆
・亜麻色の髪の乙女
・沈める寺
・ミンストレル

《子供の領分》より
・雪は踊っている
・ゴリウォーグのケーク・ウォーク

これらの曲の演奏技法、運指、演奏するための基礎練習、背景の解説が図解入りでとても詳しく書かれています。どうやったらオシャレで色彩感覚豊かな表現ができるのか、この本を読むと沢山の実践的なヒントをもらえそうです。一口にスタッカートやレガートと言っても、豊富で、それに応じて数多くのタッチも工夫しないといけません。ペダルも細やかさが求められます。そういった技術的なことも細かく書いてくれているので有り難いです!!しかも、文章が上手いし、固くない話題(ドビュッシーは女性の長い黒髪フェチだった、とか(笑))もうまく混ぜているので、肩に力を入れ過ぎずに読めます。

本の冒頭には「ドビュッシーが好きだった名画」というコーナーがあって、目を楽しませてくれるとともに、ドビュッシーの音楽が絵画と密接な関係にあることがよく分かります。ドビュッシーは、おどろどろしい絵画も好きだったらしく、けっこう不気味な曲を書いているのも納得できました。

各曲の解説の後は、「タッチと音色の色々」「指先から感じるドビュッシー」「耳と足先から感じるドビュッシー」「タイトルの意味を間違えなくとらえよう」と続き、各曲の解説とは少し違った切り口からドビュッシーに迫ります(*´▽`*)

「ドビュッシーらしさ」のよく出た演奏について、いづみこ先生は

 こうじゃなければいけない…というのはないのですが、よくみかける傾向として、音が厚くなりすぎた「ブラームスみたいなドビュッシー」、というのがあります。それはちょっと違うんじゃないかな?と。
 ドビュッシー自身は「物事を半分だけしゃべって、残りの半分は聴いている人の想像力にまかせるような音楽を書きたい」と言っていました。
 だからロマン派を弾くときみたいに、全部の気持を音楽に託してしまうとか、表面的に演奏効果が上がるような弾き方をするとか、そういうのはちょっと合わないのではないかと思う。



と書いておられます。これはショパンやモーツァルトに通じるような気がしますね。彼らも音楽に関しては「節度の人」ですから…。

読んで楽しい、生徒の役に立つ、先生にも役に立つ、素晴らしい本を手にして、とても嬉しいです。ドビュッシーの世界への関心が深まりました。おススメの本です!!


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No Subject * by amy
こんばんは~
何となく(笑)今年最初のコラボ記事になりましたね~(*^▽^*)
コメント返信してからベルガマスク組曲は収録されていないことに気が付きました(笑)失礼しました~~<(_ _)>

>彼らも音楽に関しては「節度の人」
そうですね!!同感です。

私は「節度の人」の曲が好きなのかも(笑)
あまりにもロマン派的な、感情表現の濃い演奏は出来そうにありませんわ。。( ̄▽ ̄;)
「ブラームスみたいなドビュッシー」て・・・
音源で聴いてみたい気がします(笑)

To:amyさん * by Nekoushi
amyさん、コメントありがとうございます~~(^^♪

無意識のうちのコラボになってましたね(笑)
今年も何が起きるか楽しみです(*´▽`*)

> コメント返信してからベルガマスク組曲は収録されていないことに気が付きました

ベルガマスク組曲は「タイトルの意味を間違えなくとらえよう」のコーナーで少し言及されてましたが、演奏技術的なことではなく、タイトルにふさわしい雰囲気についての説明でした。

> 私は「節度の人」の曲が好きなのかも(笑)

モーツァルトとショパンがお好きなので、そうですよね!!
ベトソナでも、24,27(2楽章)、31など、ガンガン弾く系じゃないですもんね。

> 「ブラームスみたいなドビュッシー」て・・・
音源で聴いてみたい気がします(笑)

和音がやたらと分厚くて、オシャレじゃなくて野暮な感じ?
怖いもの聞きたさで聴いてみたいですね(笑)

No Subject * by mayu0630
いつもコメントをくださり、ありがとうございますm(__)m

来月の11日の21時~、ネコウシさんが大好きな
「なかみっちゃん」が恋クラに出演されますね~🎶
https://twitter.com/Ikuyo_nakamichi/status/1085756868989874176

この日、私は横浜で阪田知樹さんのリストを聴きに行くんですが、
恋クラも忘れずに録画して出かける予定ですv-290

To:mayu0630さん * by Nekoushi
mayu0630さん、こんばんは~~

「なかみっちゃん」情報ありがとうございます(*´▽`*)
2月11日…。少し先なので、まだ録画予約できませんが、忘れないようにカレンダーに記入しておきました~~

横浜での阪田知樹さんのリスト、楽しまれてきてくださいね(^^♪
期待の若手ですよね(*'▽')

文筆が本業?ピアノが本業?

記事のタイトル、私のことじゃありませんよ(^^;;ピアニストの方は、文才のある人多いですよね。例えば、仲道郁代さんは、面白おかしい話、本格的な音楽の話、哲学的な話を織り交ぜてサラッと読ませてしまう『ピアニストは面白い』が傑作です。私の中では、この本の本当のタイトルは『なかみっちゃんは面白い』です(笑)真摯で分かりやすい語り口でピアノ曲について深い話を読ませてくれるイリーナ・メジューエワさんの『ピアノの名...

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記事のタイトル、私のことじゃありませんよ(^^;;

ピアニストの方は、文才のある人多いですよね。

例えば、仲道郁代さんは、面白おかしい話、本格的な音楽の話、哲学的な話を織り交ぜてサラッと読ませてしまう『ピアニストは面白い』が傑作です。私の中では、この本の本当のタイトルは『なかみっちゃんは面白い』です(笑)

真摯で分かりやすい語り口でピアノ曲について深い話を読ませてくれるイリーナ・メジューエワさんの『ピアノの名曲 聴きどころ 弾きどころ』も印象的で、愛読書の一つです。語り下ろしなので、正確には「文才」ではないかもしれませんが、細かいことは気にしないことにしましょう。

それから、物凄く哲学的な本を色々書いているヴァレリー・アファナシエフさん。読もうと思って挫折してきたのですが、いつかはちゃんと読んでみたいものです。

そして、面白いエッセイをいっぱい書いているピアニストと言えば、中村紘子さん。
ご存知、素敵な「蛮族」です(笑)

前置きがやたらと長くなりましたが、今回の本題は、上記の方々ではなくて、昨日の読売新聞の読書欄の「始まりの1冊」というコーナーに載っていた、青柳いづみこさんです。「始まりの1冊」は、今の人生の第一歩になった1冊について語るコーナーのようです。

前置きで挙げた方々は、ピアノが本業だと分かるのですが、青柳さんは、どっちが本業だか分からない(^^;;
『ドビュッシーと世紀末の美学』という論文で博士号を取得した方で、専門はフランス音楽です。amazonで検索してみると、山のように著書が出てきます。amazonの著者紹介での肩書は「ピアニスト・文筆家」で、「演奏と執筆を両立させる希有な存在」と書いてありました。ってことは、両方とも本業なんだ…。私も青柳さんが書かれた中公新書の『ショパンコンクール』を持っていますし、ドビュッシーを本格的に弾くことになったら『指先から感じる ドビュッシー』とか『ドビュッシーとの散歩』を読もうと決めています。

「始まりの1冊」で本人が語るには、中学の頃から童話を書き始めていたそうで、以下、抜粋・引用してみますと、

デビュー・リサイタルはそこそこ成功だったが、一応ピアニストになってみると「どうしても書きたい」思いはつのった。といっても創作ではなく、何かを調べて書く方が性に合っている。83年から東京芸術大学の博士課程に再入学し、ドビュッシーに関する論文が受理されたのが89年。しかし、当時は、サティ、マーラーの時代、ドビュッシーの本など没後100年の2018年まで出ないだろうと言われた。

思い余って出版プロデューサーに相談したところ、まずは読者層開拓のために、ピアニストの生活を日常感覚で書いたエッセイを音楽雑誌に連載するようにすすめられた。『ハカセ記念日のコンサート』(初版は東京音楽社)は、このときの音楽雑誌への連載がもとになっている。

連載中に評判が良かったのは「目玉焼きを食べる話」と「ビフテキ効果」。(←どんな話か気になる!)



とのことで、『ハカセ記念日のコンサート』が青柳さんにとっての「始まりの1冊」だそうです。残念ながらこの本は現在品切れらしいですが、なんとか探し出して読んでみたいです。

『ハカセ記念日のコンサート』が出たのが1990年で、記念コンサートをピアノ弾きながら合間にトークという形にしたら、かなり批判を受けたとか…。音楽家たるもの言葉なんか使わずに音楽だけですべてを表現しなさい!!ということでしょうね。今ではトーク付きコンサートは当たり前の存在になっていますが、その先駆者でもあるというわけですね。

冒頭で「私のことじゃない」と書いたにもかかわらず、「創作ではなく、何かを調べて書く方が性に合っている」というところに共感を覚えて、妄想を掻き立てられます(^^;; ひょっとすると、私がピアニストだったら、どちらかというと似たようなタイプになっていたかもなぁ、なんて…。若い頃はエッセイ集『猫は丑三つ時にピアノを弾く』シリーズを出して、年取ってからはチェンバロに本格的にハマって専門書を出してしまう。監修じゃなくて、ちゃんと自分で書く。

色々と夢は膨らみますが、青柳さんに戻ります。今回の読書欄を見て、大量の著書の中から少しずつ読んでいきたくなりました。どういうわけか、演奏を聴いてみたい、というより、著書を読みたいなんですよね~~。私の中の音楽の世界ではドビュッシーは脇役だからか…??いや、何冊も読んでいるうちに、逆に演奏を聴いてみたくなるということもありそうです♪♪

ふと気づくと、ドビュッシーのメモリアルイヤー2018年は、もうすぐ終わろうとしていますね。


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NoTitle * by 通りすがりの者
「翼のはえた指 評伝安川加壽子」も、読んでみてください。

通りすがり様へ * by Nekoushi
コメントありがとうございます。
ご紹介いただいた『翼のはえた指 評伝安川加壽子』も是非読んでみたいと思います!

NoTitle * by かつさん
Nekoushiさん、こんにちは
かつです。

青柳いづみこさんはピアニストとしての知名度があるものの、
私のように地方に住むと演奏を聴く機会もないですね…どのような演奏なのか気になることろです。
かといって本をあまり読まない私にとって分文筆家の印象もなく。
でも青柳さんのHPは時々チェックしていますよ。
メルド日記のカテゴリ[ヴィンテージ・ピアニストの魅力]が好きです。
現役ピアニストが現役ピアニストについて語るってあまりない事なので興味深いですね!


To:かつさん * by Nekoushi
かつさん、こんにちは~~
コメントありがとうございます(^^♪

演奏に触れる機会って、都市(特に首都圏)と地方で、大きな差がありますよねΣ(゚д゚lll)!!
私も地方在住なので痛感させられます(>_<)

あっ、そうか!!
青柳さんはHPで日記を書かれているのですね。
教えてくださり、ありがとうございました(*^▽^*)

NoTitle * by ゆりこ
こんにちは^^

Nekoushiさんがピアニストだったら文筆業と兼任、うんうんなんだかとっても納得です♪

ちなみに私は生まれ変わったら、小さな街のピアノ教室の先生になりたいです♪そして発表会の講師演奏でショパンのバラード1を素敵に弾きたいです(妄想しすぎ 笑)

To:ゆりこさん * by Nekoushi
ゆりこさん、こんにちは~~
コメントありがとうございます(^^♪

妄想に付き合ってくださって嬉しいです(*^▽^*)

> ちなみに私は生まれ変わったら、小さな街のピアノ教室の先生になりたいです♪そして発表会の講師演奏でショパンのバラード1を素敵に弾きたいです

とても素敵です(≧▽≦)
ゆりこ先生の教室に子供(もしいれば)を是非とも通わせたいです~~
優しそうですし、丁寧に教えていただけそうですもん。
きっと、人気教室になると思います(*´▽`*)

読書メモ:ウィーンの街の物語!?―『啓蒙都市ウィーン』

ウィーンが18世紀後半にどのように近代的な都市になっていったかということについて書かれてた『啓蒙都市ウィーン』(山之内克子、山川出版)という本を読んでみました。ちょうど、モーツァルトの時代、女帝マリア・テレジアと皇帝ヨーゼフ2世(テレジアさんの息子、アントワネットさんの兄)の時代の話です。私の関心事が一点に集中する時代と場所が舞台です(≧▽≦)ワルツ『ウィーンの森の物語』にちなんで、ウィーンの街の物語なん...

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ウィーンが18世紀後半にどのように近代的な都市になっていったかということについて書かれてた『啓蒙都市ウィーン』(山之内克子、山川出版)という本を読んでみました。ちょうど、モーツァルトの時代、女帝マリア・テレジアと皇帝ヨーゼフ2世(テレジアさんの息子、アントワネットさんの兄)の時代の話です。私の関心事が一点に集中する時代と場所が舞台です(≧▽≦)

ワルツ『ウィーンの森の物語』にちなんで、ウィーンの街の物語なんてリラックスした感じのタイトルにしてしまいましたが、歴史の教科書で有名な山川出版のテーマ別小冊子「世界史リブレット」の中の1冊です。マリア・テレジアとヨーゼフ2世が啓蒙専制主義の思想に従って色々と改革をしていった過程で、ウィーンが近代的な都市になりました、という内容です。

啓蒙主義というのは「科学と理性の力を通じてこそ、人間は、宗教的盲信や封建的支配の桎梏から解き放たれ、そして、精神、肉体ともに自由で、優れて理知的な存在として、未来に向けてよりよい社会を築いていくべき」という思想です。君主が率先して、大衆をそういう方向に導き、国家のために尽くしてもらう、というのが啓蒙専制主義です。ヨーゼフ2世は、「君主は国家の第一の下僕」と言ったそうです。理性とか合理的な思考を高めるための改革をたくさん進めています。

以下、印象に残った内容を箇条書きにしてみます。

・検閲を大幅に緩和し出版を自由化した結果、読書文化が花開いた。読書室が沢山できたり、カフェで知識を交換したり…。
・宮廷劇場を一般開放した。さらに「ドイツ国民劇場」と改称した。←オペラ~♪♪
・上流知識階層の音楽への関心が高まり、サロンコンサートや予約演奏会が盛んになった。←器楽曲~~♪♪
・ごく一時的ながらフリーメーソン(自由、平等、友愛を掲げる秘密結社)を奨励した。←『魔笛』~~♪♪
・帝室保有地を公共緑地として開放して、一般市民レクリエーションの場になった。
・マリア・テレジアがウィーンに初めて番地制度を導入した。その結果、市内郵便ができた。(それまでは国際郵便しかなかったらしい)
・初めて本格的な測量を実施し、地図の出版がブームになった。
・カトリック教会の影響力をそぐため、修道院を大量に廃止した。
・病院や救貧院などの公共施設・福祉施設が沢山つくられた。ヨーゼフ2世は医学の心得があり、自分で診察したこともあったそう。
・埋葬の簡素化、市内における埋葬の禁止。(映画『アマデウス』でモーツァルトの亡骸が粗略に扱われる場面が出てきますが、これのせいなのですね)
・街灯が導入され、季節や月の満ち欠けに関係なく、深夜1時まで点灯された。これは画期的なことだったらしい。で、その結果「夜型」の生活になった(^^;;
・「理性の飲み物」として(酔っぱらわないから…笑)、コーヒーを飲む習慣が広まった。←文字通りウィンナーコーヒー(いや、生クリーム浮かべたものを毎日飲んでたわけないけど)
・服装規定の全面廃止。身分にかかわらず好きな服を着ていいことになった。(挿絵にオシャレな女子が載ってたので、てっきり貴族の娘かと思ったら、小間使いとか料理女でしたΣ(・ω・ノ)ノ!)

当時は啓蒙主義の時代だったので、都市の近代化はウィーンに限った話ではありません。でも、この本を読んで、モーツァルトたちが活躍できる舞台がととのい、その後、ウィーンが音楽の都になった背景を垣間見ることができて、興味深かったです。


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お気に入りの詩3編―『まるむし帳』より

ピアノの詩人といえば、言うまでもなくショパン。詩人のヨシフ・ブロツキーは、「詩人というのは言葉を削る人。削って削って、残されたひとつひとつの言葉はリズムも香りも内容もすばらしい。それが詩になる」という意味のことを言っているそうです。ピアニストのイリーナ・メジューエワさんは著書『ピアノの名曲 聴きどころ 弾きどころ』で、そのような詩人の世界は複雑かつシンプルで、そこがショパンの世界に通じると、指摘し...

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ピアノの詩人といえば、言うまでもなくショパン。詩人のヨシフ・ブロツキーは、「詩人というのは言葉を削る人。削って削って、残されたひとつひとつの言葉はリズムも香りも内容もすばらしい。それが詩になる」という意味のことを言っているそうです。ピアニストのイリーナ・メジューエワさんは著書『ピアノの名曲 聴きどころ 弾きどころ』で、そのような詩人の世界は複雑かつシンプルで、そこがショパンの世界に通じると、指摘しています。そういうわけで、ショパン好きにとっては、詩は身近な世界(の割には私はあんまり詩に接する機会はないのですが…)。

前置きはこれぐらいにして、今回は、さくらももこさんの詩集『まるむし帳』から、私が心惹かれる詩を3編ご紹介したいと思います。

1つ目は『有無』という詩です。

無の状態は
真白なのか
真黒なのか
白なら白が在り
黒なら黒が在り
両方とも違うのなら
無が在り
何も無いのに
無いことが在ることになる


「有」と「無」についての哲学的な詩ですね。「無」と「有」の対比、「白」と「黒」の対比が印象的で素敵です。ピアノ好き、音楽好きとしては、「白と黒」から鍵盤を連想し、「有と無」からは「休符も音楽」ということも連想してしまいます。

2つ目は『ひとときの何人』という詩です。

1秒前のわたしを取り出すには
0.1秒前のわたしも
0.01秒前のわたしも
0.001秒前のわたしも
0.0001秒前のわたしも
0.00001秒前のわたしも
何人も何人も何人も何人も
必要だよ。
一瞬は永遠を内包しているね。
永遠は まばたきなのかな。


一瞬と永遠、極小と無限大は表裏一体ということでしょうか。これまた哲学的な世界ですね。
そして、繰り返しによるリズム感が素敵です。0.1秒から0.0001秒まで積み重ねていくあたり、モーツァルトが手紙でよくやっているような言葉遊びも連想します。

3つ目は『かなしい子供』という詩です。

いつか別れる悲しさが
出会ったときに
生まれる子供。

その人のことが
大好きになればなるほど
その子は大きくなってゆくよ。

その子を
置き去りにして
一番早くに
行ってしまいたいと
ときどき思う
わたしは弱い母親です。


別れに対する不安を子供に、その不安が大きくなっていくのを子供の成長に例えているわけですね。敢えて子供の成長という喜ばしいものに例えることによる対比が、強い印象を与えて効果を上げているような気がします。
この詩の気持ちは、とてもよく分かります。私も「別れ」というのはすごく苦手です(>_<) ショパンの『別れの曲』は、曲自体は好きなのに、そのタイトルゆえに弾くのがためらわれます。しかも、ショパン本人が付けたタイトルではないにもかかわらず、曲調とタイトルがあまりにもマッチし過ぎているので、なかなか練習する気になれません(´;ω;`) ←どんだけ”別れ恐怖症”なんだろう??この点、ベートーヴェンの『告別ソナタ』は、同じようなタイトルでも全然違いますね!第1楽章が「告別」、第2楽章が「不在」、第3楽章が「再会」を表しているので、前向きな気分になれます(*^▽^*) いや、優劣の問題でもなく、好き嫌いの問題でもなく、単に気分の問題です。

この詩集は、作者が20代の頃の作品だそうです。
あらためて凄いなぁと思いながら読んでいます。


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作曲者の手を離れるとき * by 名無しさん
こんにちは、まだお邪魔します。
前回はコメントのお返事、ありがとうございました。
今回は、意味の深い素敵な詩のご紹介、ありがとうございます。

よく作品は芸術家にとって子供のようなものだと言われますが、
文学や美術と違って
音楽の場合は、作曲者自身が演奏しないことが多いので、
演奏者によって、どれくらい曲が異なってしまうことか・・・
作曲者はどういう気持ちで聞くのでしょうね。
時々自分のピアノがあまりにも拙くて
作曲者に申し訳ないと思うこともあるのですが・・・

いろいろな解釈、完璧でなくでも何とか音符を押さえることも許される音楽は
それだけの可能性を秘めたすばらしいものなのでしょうね。

いろいろと考えさせられた記事でした。
ありがとうございました。

Re: 作曲者の手を離れるとき * by Nekoushi
名無しさま、コメントありがとうございます(^^♪

> 今回は、意味の深い素敵な詩のご紹介、ありがとうございます。

そうおっしゃっていただけると、とても嬉しいです。

> 文学や美術と違って
> 音楽の場合は、作曲者自身が演奏しないことが多いので、
> 演奏者によって、どれくらい曲が異なってしまうことか・・・

音楽も何かを表現しているものなので、何を表現しているのか考えなければいけないですが、音はとても抽象的な存在なので、言葉や画などより解釈の幅が広いのでしょうね。奏法とか音楽形式とか、縛りはあるにせよ…。
それでも作曲者の意図にできるだけ迫りたいと頑張って取り組むことに意義があるし醍醐味があるのだと思います。

音を追うだけで必死で、そこまで到達できないのが残念ですが、

> いろいろな解釈、完璧でなくでも何とか音符を押さえることも許される音楽は
> それだけの可能性を秘めたすばらしいものなのでしょうね。

本当におっしゃる通りだと思います!!
コメントを頂いて、音楽の魅力を再確認できた気がいたします。

『空想書店』に仲道郁代さん登場

『空想書店』というのは、読売新聞の読書コーナーの企画で、著名人が「店主」となって、1冊の本をピックアップして徹底紹介するコーナーです。決して、私が本を出す妄想をするコーナーではありません(笑) いや、そういうコーナーもいつかは作ってはみたいですが…(^^;;で、10月14日の「店主」が仲道郁代さんでした!『「聴く」ことの力 臨床哲学試論』(鷲田清一著、ちくま学芸文庫)という本を紹介してくださっています。「ただ...

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『空想書店』というのは、読売新聞の読書コーナーの企画で、著名人が「店主」となって、1冊の本をピックアップして徹底紹介するコーナーです。決して、私が本を出す妄想をするコーナーではありません(笑) いや、そういうコーナーもいつかは作ってはみたいですが…(^^;;

で、10月14日の「店主」が仲道郁代さんでした!
「聴く」ことの力 臨床哲学試論』(鷲田清一著、ちくま学芸文庫)という本を紹介してくださっています。「ただ受けとめる、「聴く」ということが、他者の自己理解をひらく。人と人とのつながり方や存在を尊重することを、臨床の現場から深く考えさせてくれる」本だそうです。正直、どんな内容なのか見当がつかないのですが…Σ( ̄ロ ̄lll)!!

以下、なかみっちゃんが書いた文をそのまんまご紹介します。

 哲学者カントは書いた。「私の上なる星空と、私の内なる道徳律」。カントを学んだベートーヴェンは晩年に書いた。「われらの内なる道徳律と、われらの上なる星空」。
 「私」と「私達」。「私」は、あなた達の中でワタシと認識される。あなたがいて初めて私はワタシそのものを認識する。そしてあなたも、他者の中で一人のワタシとなる。
 鷲田清一さんの『「聴く」ことの力』で語られる臨床哲学とは、ワタシとあなたの関係の中で見出される生きた哲学である。他者の前に身を置くことによって自分自身もまた変えられるような経験の場。「聴く」という、受け入れる行為がもたらす可能性の哲学。
 そこでは聴くことによって心が響き合う。ここに、私は”祈り”とも言えるような感覚を持つ。ちっぽけな私は、多くのあなた方、すなわち多くのワタシ達の中で生かされている。そして、あなたの内なる声、私の内なる声を聴くことによって、私は私として生きている。生きているという感覚を持つことができる。
 ショパンが祖国ポーランドを去る最後の演奏会。2度と戻ることのなかった故郷。そこで奏でられた協奏曲を、彼のお母さんはどのような思いで聴いただろう。友人たちは?ショパン自身はどんな思いで奏でたのか。そして200年という時を経て、今、私はどんな想いをのせて演奏するのか。それを聴いてくださるそれぞれのあなたは、何を聴くのか。
 言葉で語られるものはそこには何もない。在るのは、鷲田さんの言葉を借りれば、「わたし、あなた、かれといった人称の境界をいわば溶かせるようなかたちで、複数の<いのち>の核が共振する現象とでもいうべきもの」であろう。
 いのち…。言葉にできないほど不確かで、曖昧で、重く、素晴らしいもの。その核が、共振するという現象。
 それはかけがえのない時間だ。そんな瞬間を持つことができたら、人はどれだけ柔らかく強く在ることができるだろうか。
 私は、私の上なる星空を見上げながら、願わくば、上なる星空に包まれながら、私の内なる声を聴き、音に託す。音楽が奏でられ、それを聴くとき、音楽が私たちの魂を共振させてくれることを私は信じる。
 私の空想書店は、そんな経験があるということを感じられる場所となりたい。
(読売新聞10月14日付けより)


 
傾聴することの大事さ、ひたすら耳を傾けることによって「共振」が得られる。なかみっちゃんは音楽を傾聴と共振の媒体として演奏をしているのですね。たぶん、それが演奏哲学なのだと思います。難解な文章でしたが、なかみっちゃんがどんなことを考えながら演奏しているのか、垣間見ることができて良かったです!!人の心に深い関心をお持ちなので素敵な演奏ができるのだと思います。

あと、今の時代、傾聴ではなくて主張することばかりがもてはやされている気がします。出来るだけ多くのことを言った方が勝ち!的な…。そういう今こそ、傾聴の大事さを説いたこの本は重要なんじゃないかなぁと空想しながら、「読んでみたい本リスト」に追加してみます。なかみっちゃんがせっかく推薦してくださってることだし。って、結局そこに行き着く…(笑)

今回の『空想書店』で、なかみっちゃんは、他にも下記の4冊の本を挙げています。
一言紹介が、何とも詩的で美しく素敵です(*´▽`*)
『音楽を愛する友へ』、特に読んでみたいなぁ。どんな文章に感化されたのか、とても知りたいです!!

・『新編 銀河鉄道の夜』(宮沢賢治、新潮文庫)…言葉から天上の音楽が聴こえる。宇宙を美しい響きで震わせることの意味、切なさと美を考えさせる。

・『預言者』(カリージ・ルブラン著、船井幸雄訳、成甲書房)…言葉になった智慧は、言葉にならない智慧の影。心の中でもう知っていることなのだ。

・『八木重吉詩画集』(八木重吉詩、井上ゆかり絵、童話屋)…心の底に透明なしずくが染み込む。哀しいと美しいは同義。感覚の粒子をさらに砕いていくと見えてくる世界。

・『音楽を愛する友へ』(エトヴィン・フィッシャー著、佐野利勝訳、新潮文庫)…後半のB・ワルターの「音楽の道徳的ちからについて」。私はその文章に感化されて生きてきた。




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