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シフの本『静寂から音楽が生まれる』―読み応えあり過ぎてヘビーです\(◎o◎)/!

シフ『静寂から音楽が生まれる』

アンドラーシュ・シフの『静寂から音楽が生まれる』(岡田安樹浩訳、春秋社)を読んでます。ピアノでバッハといえばシフ!!のシフ先生の待望の本、不覚にも昨年の9月に出ていたことに今頃気づきました。帯に並んでいるキャッチコピーも煽る煽る(笑)。 「思索する音楽家 芸術の核心へ」、「巨匠の素顔に迫る対話とエッセイ」、「現代最高のピアニスト、アンドラーシュ・シフの肖像」と…。400ページを超える大作で、第1部は『音楽と人生』と題するマーティン・マイアー(ジャーナリスト)との対話、第2部は『ピアニストは考える』と題するエッセイ集です。

音楽の本質から、解釈、演奏、作曲家の位置づけ、自身の生い立ち、社会に至るまで内容豊富で読み応えがあり過ぎて、いつものような読書メモにまとめられないです\(◎o◎)/! 気になったポイントを、ごくごくかいつまんで羅列してみます。

・本のタイトル『静寂から音楽が生まれる』について。これは冒頭の部分で音楽の本質について語っている言葉からとられています。ぐっと引き込まれます。なんと素敵な表現なのでしょう。

はじめに静寂があり、静寂から音楽が生まれます。そして、音響と構造からなる実にさまざまな現在進行形の奇跡が起こります。その後、ふたたび静寂が戻ってきます。つまり、音楽は静寂を前提としているのです。


・バッハの音楽に厳格ではなく自由を感じる。

バッハを弾くと、いつも解き放たれたような気持になりました。よく言われているバッハの厳格さは錯覚だと分かったのです。(中略) バッハを弾くことによって自分の考えを表明できたのですから!私の師であるジョージ・マルコムは、この自由を後押ししてくれました。要するに、バッハのフーガは10の異なるテンポで演奏することができて、たいていは感銘を与えるものになる。ということです。ショパンは、ほとんど自由が許されません。ロマン派の作曲家というだけで、ショパンを好き勝手に扱ってよいと思っているなら、その人は間違っています。なんという間違いでしょう!取るに足らないような誇張さえも悪趣味になりえるのです。私はむしろ、バッハのほうに水を得た魚のような感覚を覚えるのです。


これはバッハを弾くときの励みになります(*´▽`*)

・バッハでペダル使うな!!←シフ先生の口癖の一つですね
(ひぃっ、ゴメンナサイですΣ( ̄ロ ̄lll)!! でも、お言葉を返すようですが、手が小さい人にはペダル無しではいかんともしがたい箇所があるのです(^^;;)

・バッハとベートーヴェンが二つの最高峰(シフの中では)。

(ベートーヴェンは)評価してもし過ぎるということはないでしょう。最近、私はベートーヴェンをモーツァルトよりも上位に置いています。というのは、ベートーヴェンは人間の存在にかかわるもっとも重要な部分に触れているからです。彼の偉大な作品群に、バッハと同じような超自然的な何か、宇宙的な何かを感じるのです。


・実はシューベルトをかなり愛している。シューベルトのソナタのチクルスを初めて実施したピアニストらしい。シューマンとブラームスにも関心あり。

・音楽のビジネス化、グローバリゼーション、聴衆の質の低下、批評家の質の低下、コンクールがあふれかえっていることに危惧を抱いている。(というか、怒りを覚えている感じを受けた)

・メンデルスゾーンを高く評価していて、過小評価されていることに反発している。

私は、メンデルスゾーンのイメージが悪意によって歪められていると確信しています。加えて、誤った先入観やひどい偏見がはびこり、しばしば誤解へ導いています。彼が生涯にわたって生み出した作品は、彼の信じ難いほどの才能を証明しており、もっとずっと高く評価されて然るべきですし、もっと深い愛情をもって愛好されるべきです。
(中略)
加えて、彼には作曲以外にも非常に重要な功績があることを忘れてはいけません。1829年3月11日は音楽の歴史における一大記念日です。この日、バッハの《マタイ受難曲》がメンデルスゾーンの指揮によってベルリンで蘇演されたのです。この記憶に残る事件は、バッハ・ルネサンスの端緒に他なりません。(他に、シューベルトの『大ハ長調交響曲』の初演、シューマン、ショパン、ベルリオーズ、リストなどを積極的に支持し普及させたことも挙げている) つまりメンデルスゾーンは、古い財産の保護者であると同時に、新しい様式の行く先の案内人でもあったのです。


・メンデルスゾーンが否定・非難されていることの理由について。

多くの人は、真の芸術は不安と悲しみの経験の上にしか成立しないと誤認する傾向にあります。(中略)
(悲劇的な)運命に、私たち「善良な人」は哀れみの気持ちを覚え、感情移入します。悲劇が偉大なことの必須条件であるかのように、私たちに信じ込ませるのです。対して、メンデルスゾーンは惜しまれもしなければ、悲しまれもしていません。彼には才能があり、成功していて、裕福な市民階級という出自で幸福だったことが、逆にすさまじい嫉妬心をかき立てているのです。


もう一つの大きな理由として、シフは、メンデルスゾーンがユダヤ人だったことと、歴史的に根深い反ユダヤ主義の差別を挙げて、感情を露わにして反感と非難を表しています。実はシフ自身がユダヤ人の出身で、祖国ハンガリーでは差別に遭っていたという背景があるのです。

・圧政や強権支配への強い拒否感

シフが生まれた時のハンガリーは、共産主義の酷い強権支配。それに、上記のようにユダヤ人差別もある。そういうわけで、自由とか民主主義が損なわれること、強権支配が台頭することの兆しに物凄く敏感です。読んでいて、何の本を読んでいるんだっけ??と思わされた箇所も少なくありません。極右の出現とか、イギリスがEUから抜けること、アメリカでトランプ大統領が当選したことなどへの懸念が書かれていたりします。シフ先生の一筋縄ではいかないパーソナリティ(公開レッスンなどでの毒のあるユーモア連発とか…)は複雑な人生を歩んできたことが背景にあることがよく分かります。

全体的な印象としては、音楽や芸術についてのシフ先生の驚異的な深い洞察に接することができると同時に、どうしても生い立ちに由来するパーソナリティの複雑さの方がより強く印象に残ってしまう感じがしました。ん~、でも、それがシフの芸術を形作っているのだから、分けて考えることは出来ないんですよね。読み応えあるのですが、正直言って、けっこう戸惑います。タイトルに「ヘビーです\(◎o◎)/!」と入れたのはそういうことです。

ともあれ、ディープなシフ・ワールド。400ページもあるし、いいお値段ですが、シフに関心のある方にはおススメです(^_^)/


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tag : アンドラーシュ・シフ,静寂から音楽が生まれる,

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プロフィール

NekoUshi

Author:NekoUshi
◆数年おきにピアノがマイブームになり、挫折と再開を繰り返しています。
◆バッハ、モーツァルト、ベートーヴェン、ショパンが特に好きです♪
◆レッスン歴は、子供の頃と大学生の頃(25年ほど前)に少々。現在は独学です。
◆独学の記録を時々「セルフレッスン」という名の仮想(妄想?)レッスンの形に仕立てて書いてます♪

練習中&終了曲
◇レッスン課題
・チェルニー40-31番
・バッハ 平均律第1巻17番 変イ長調
・ベートーヴェン ソナタ第22番ヘ長調

◇ベートーヴェン祭り
・ベートーヴェン ソナタ第28番イ長調~第3楽章

◇自主練
・チェルニー『毎日の練習曲』2番

◇憧れの無謀曲 寝かせ中
・リスト『バラード 第2番』
・シューマン『幻想曲』第2楽章

◇2020年の終了曲
・シューマン 3つのロマンス~第2番 嬰へ短調 Op.28-2

◇2019年の終了曲
・チェルニー30-23番
・チェルニー40-27、28、29、30番
・チェルニー左手24-19番
・バッハ シンフォニア14番、12番、7番
・ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第10番ト長調~第1楽章
・ショパン『幻想即興曲』
・メンデルスゾーン『春の歌』

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