FC2ブログ

礒山雅先生のコンパクトなバッハ入門書 『J・S・バッハ』が楽しい♪♪

大バッハ様に反抗期かも?と言いながら、このところバッハに関する記事ばっかりなのは、どういう訳でしょう。あっ、あれだ。「愛の反対は嫌いではなく無関心」ってやつ(笑)。これだけ関心があるのですから、やはり大バッハ様のことは好きみたい。何だかオカシイ前置きになってしまいましたけれど、今、『J・S・バッハ』(礒山雅著、講談社現代新書)を読んでいます。

『J・S・バッハ』(礒山雅)

Amazonから届いてビックリ。帯に、のだめ&千秋のイラスト入りで、「『のだめカンタービレ』でクラシックにハマった人へ 超越する楽聖 バッハ入門の決定版」というキャッチコピーが書いてあります。

さて、この本は、日本のバッハ研究の第一人者の一人であった礒山先生(2018年に惜しくも逝去された)が1990年に出されたもので、バッハの音楽性、哲学、そして、一族や人となりについての話がコンパクトにギュッと詰まっています。のだめイラストの帯のキャッチコピーがピッタリ当てはまってます。今回の記事では、気になったポイントやエピソードを、思いつくままにピックアップしてみます。

【一族・人物像関連】
・「初代」ヴィートス・バッハは、ハンガリーからドイツに移ってきた音楽好きでツィターを愛奏するパン職人だったらしい。その後、音楽職人一族に。
・バッハ一族のネットワークは凄かった!!情報網をめぐらせて、一族の就職にコネを発揮したり、作品を融通しあったり…笑
・大バッハの性格は、イメージ通り、勤勉・実直・頑固。そして、倹約家。というか、ドケチ(笑)。楽譜の紙がもったいないとか言って、ぎゅうぎゅう詰めに書いたりしてたそう。自筆譜を研究する人にとっては堪らないですね。
・「蛍雪の功」みたいな「月下の写し」というエピソードがある。バッハの兄が楽譜集を貸してくれないというので、夜にこっそり盗み出して月の光を頼りに筆写し、完成したと思ったら兄に没収されてしまった!!音楽が身についたのは間違いないでしょうけど、この話のオチはちょっと後味悪い(^^;;
・厳しく指導し過ぎて合唱団の恨みを買い、団員の一人に殴り掛かられたところ、剣で応戦して乱闘になりかけた(^^;; 意外とワイルドな一面も…。
・当時女人禁制だった教会のオルガン席にご婦人を立ち入らせて歌わせて、大問題になった。立ち入らせたのが許嫁(またはその姉)だったところが、奔放さだけではなく節度も感じさせます。これが女人については節度の欠片もないアマデウスだったら…笑
・大バッハ様は学歴コンプレックスだった。ちょうど学歴が重視され始める時代に当たっていて、大学を出ていないことが就職の上で何かと不便だったようです。それで、息子たちを必死になって大学に入学させた。現代の普通のパパと全く同じだわ~~。「お父さんは大学行かなかったせいで苦労したので、君たちにはそういう苦労をしてもらいたくないから、ちゃんと大学に行きなさい」と。思わず親しみ湧きまくりです(笑)。
・でも、息子たちは偉大なる大バッハ様にコンプレックス。そりゃそうだ。博打かなんかで身を持ち崩して早死にしてしまった息子までいるそうです。立派過ぎる親のもとに生まれた子供は大変です。特に、父と息子だったらそうでしょう。お察しします。とはいえ、独自の境地を開拓したC.P.Eバッハや、モーツァルトにも影響を与えたJ.Cバッハもいるのは立派です。

【バッハの音楽性】
 大バッハの音楽は、ホモフォニー(旋律+伴奏のスタイル)が台頭してきて時代遅れとなりかけていたポリフォニー(フーガに代表される複旋律)にこだわったことが最大の特徴です。このことの意味については、長くなりますが著者の言葉を引用しておきましょう。

 ホモフォニーの音楽は、作曲者が書法の差別化を通じて、聴き方を誘導している。どれが主旋律であるか、どこが形式の区切りであるかはおおむね明瞭にされていて、聴き手は受け身にそれをたどってゆけば、まずは音楽を正しく聴くことができる。
 これに対して、ポリフォニーはそうではない。(中略)主題の登場に耳をすましてもいいし、紡ぎ出される旋律の進展に注意をこらすこともできる。対旋律に身を委ねることも、また主題と対旋律のそのつど新たな結合を吟味することも、聴き手の自由である。
 要するにポリフォニー音楽は、聴き手に、一層自由なテキストの読みを許容するのである。すぐれたポリフォニーに接しているとき、聴き手はいつしか自由になっている。
 (中略)バッハの自由―日常を超え、多元的価値に向かって開かれた自由―を求めて、クラシックの演奏家からジャズ・ピアニストに至る多くの人々が、今バッハを演奏している。世界が21世紀に向けて模索している人間的な価値は、何より「自由」である。その自由のいわば逆説的な真理を開いてくるところに、バッハの音楽の現代性があると思う。


 それから、バッハと神と人との関係。敬虔なプロテスタントであった大バッハと神の問題は切っても切り離せないものです。神と人についてはどう考えていたのでしょう?これについても引用します。

 要するにバッハは、音楽を、人間同士が同一平面で行うコミュニケーションとは考えていなかったのだと思う。バッハの音楽においては神が究極の聴き手であり、バッハの職人としての良心は、神に向けられていた。(後略)
 神が聴き手だということになれば、音楽は人間の耳を超えることができる。人間の耳にはとらえられぬ隠れた意味を書き込んで、それを信仰のあかしとすることもできる。(中略)バッハは、これによって、人間を軽視したのではなく、おそらく人間の感性を志した。人間を超えたものとの関係においてしか人間は完成しないことを、バッハは知っていたにちがいない。


 後半は、「気になったポイントやエピソードを、思いつくままにピックアップ」以上に気合が入ってしまいましたが、書いているうちにバッハが「音楽の父」と呼ばれる理由が分かったような気がします。バッハは、ポリフォニーが歴史のかなたに流れ去ることを押しとどめ、古いものに新しい命を吹き込み、普遍的な価値を表現したのですから。ベートーヴェンは人類愛を強く表現しましたが、バッハから受け継いだのかもしれませんね。

 本書は、読んで本当によかった!!もっと早く読むべきだった~~。でも、今が出会うべき時だったのでしょう。まだの方にはお勧めします。


にほんブログ村
スポンサーサイト



tag : 礒山雅,バッハ,

カレンダー
09 | 2020/10 | 11
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
タグから記事へGO!
キーワードから関連記事に飛べます♪♪

バッハ チェルニー40番 シンフォニア モーツァルト シューマン チェルニー ベートーヴェン ショパン 仲道郁代 リスト BWV862 K.311 メンデルスゾーン 献呈 平均律第1巻 幻想即興曲 毎日の練習曲 レンタル練習室 ハイドン 調律 近藤由貴 春の歌 ベトソナ22番 Hob.XVI:34 青柳いづみこ ロマンスOp.28-2 アラフィフ肩 ハノン 幻想曲 ドビュッシー フランス組曲 ブラームス ららら♪クラシック グリーグ K.331 シューベルト 無謀曲 BWV858 ベトソナ10番 五十肩 四十肩 チェルニー30番 インヴェンション エチュード ベトソナ スランプ 楽譜 選曲会議 メトロノーム クラビノーバ こんまりメソッド 湯山昭 お菓子の世界 ベトソナ28番 ベルサイユのばら パルティータ 変奏曲 バラード 自分の演奏好き? 調性 練習曲 K.457 マズルカ さくらももこ マリー・アントワネット 和声法 グランドピアノ 指先から感じるドビュッシー ワルツ バラード2番 抒情小曲集 ピアノ椅子 ヨハン・シュトラウス スケール ヴァイオリンソナタ K.576 鷲田清一 マリア・テレジア 高橋多佳子 左手のための24の練習曲 リズム変奏 交響曲 気象病 リサイタル 植山けい 好きな調 令和 D959 旅する作曲家たち ブルグミュラー イリーナ・メジューエワ K.334 ウィンナ・ワルツ ピアニストは指先で考える 「亡命」の音楽文化誌 選曲 部分練習 久元祐子 K.574 ドゥシェック スマホ老眼 指マッサージ 変イ長調 中村紘子 無言歌 モシュコフスキー 電子ピアノ バイエル ソナチネ クレメンティ 展覧会の絵 ムソルグスキー アルマンド 梅雨 チャイコフスキー 土田京子 24番練習曲 こんまり トルコ行進曲 D960 理想の先生 北九州 響ホール カデンツ 行進曲 リシエツキ ベレゾフスキー ピヒト=アクセンフェルト チェンバロ グランド・ソナタOp.37 交響的練習曲 楽譜の視覚効果 op.119-2 ト長調 ポロネーズ マズルカOp.7-1 パスカル・ドゥヴァイヨン ハプスブルク家 キーシン ワルトシュタイン カテゴリー 似合いそうな曲 ら抜き言葉 似合う曲 タグ ルービンシュタイン ランラン ハプスブルク帝国 苦手な曲種 op.118-5 教則本 メソッド・タリアフェロ バックハウス ソナタ マーチ céleste 妄想 20の小練習曲 ポルカ プチトリアノン 山枡信明 ピアノ騒音問題 演奏と喋り方 曲名の略称 ヨハン・シュトラウス1世 半音階的幻想曲とフーガ 子供の情景 夜の女王のアリア 書き込み 全音ピアノピース 感情をこめて弾く ラデツキー行進曲 ピアニストは面白い D915 ヴァイオリン ピアノ記念日 吉松隆の調性で読み解くクラシック 小ジーグ アルペジオ 魔笛 クーラウ Hob.XVI:50 op.118-2 スマホ ウナコルダ ツィメルマン オスマン帝国 左ペダル 間奏曲 ポーランド op.117-1 復習 K.623a クリスマス サンタクロース イギリス国歌 オーストリア国歌 整体師 リスト編曲版 全調スケール コピー譜 クリアファイル 譜読み力 NHKスーパーピアノレッスン マズルカOp.59-2 ベトソナ18番 ベトソナ16番 練習崩壊 チェルニー24番 平均律 半音階地獄 上原彩子 川嶋ひろ子 エルガー クララ・シューマン トロイメライ 宮川彬良 伊藤恵 愛の挨拶 クラシックキャットトートバッグ 島村楽器 折々のことば 田部京子 好きな作曲家ランキング ブルグミュラー18の練習曲 近藤麻理恵 お片付け祭り ペダル 新型コロナ 前奏曲 18の小品Op.72 巡礼の年報 ラフマニノフ 静寂から音楽が生まれる  K.310 アンドラーシュ・シフ ルール・ブリタニアによる5つの変奏曲 コンサート動画 哲学と宗教全史 預言者 銀河鉄道の夜 上田サントミューゼ K.511 千住真理子 クラシック・エイド 内田光子 K.570 リピート付箋 ベートーヴェン生誕250周年 ナイチンゲール リピート練習 ピアノトリオ カウンセリング 音楽における十字架 看護師の日 ベアトリーチェ・ヴェネツィ 礒山雅 飛躍 モーツァルトの手紙 マスタークラス エキエル 自分褒め ピアノソナタ2番Op.22 五線紙ノート 声部書き分け 諸井三郎 アップライト スマホ認知症 ブランデンブルク協奏曲 イタリア協奏曲 まるむし帳 減7の和音 クロスリズム ラ・カンパネラ 駅ピアノ K.412 K.537 K.543 タッチ 音色 D946 脱力 導音 短音階 庄司紗矢香 K.533+494 永遠のショパン N響 岩城宏之 丑三つ時 哀しみ プレイエル 電子書籍 グラナドス フランス王妃の受難 BWV861 アルベニス ゆっくり弾き 三瀬高原音楽祭 「聴く」ことの力 演奏会用練習曲 手ペシ m.d m.s. m.g. 電子メトロノーム ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら バトン リヒャルト・シュトラウス 英雄の生涯 つるかめ算 伝説 和声法がさくさく理解できる本 マリア・ジョアン・ピリス 田園ソナタ 和声法がぐんぐん身につく本 合奏譜 ヴィルヘルム・ケンプ おんぶにだっこ ピアノ愛好者16の質問 幻想曲あるいはカプリス 貴婦人の乗馬 スティリアの女 シュタイヤー舞曲 ブログ スタッカート練習 恋するクラシック リズム練習 音楽と文学の対位法 田島令子 チェルニー50番 クラ―マー=ビューロー トンプソン ダイエット 小プレリュードと小フーガ フォーレ ノクターン 楽典 

プロフィール

NekoUshi

Author:NekoUshi
◆数年おきにピアノがマイブームになり、挫折と再開を繰り返しています。
◆バッハ、モーツァルト、ベートーヴェン、ショパンが特に好きです♪
◆レッスン歴は、子供の頃と大学生の頃(25年ほど前)に少々。現在は独学です。
◆独学の記録を時々「セルフレッスン」という名の仮想(妄想?)レッスンの形に仕立てて書いてます♪

練習中&終了曲
◇レッスン課題
・チェルニー40-31番
・バッハ 平均律第1巻16番 ト短調
・ベートーヴェン ソナタ第22番ヘ長調
・モーツァルト ソナタ第14番ハ短調

◇ベートーヴェン祭り
・ベートーヴェン ソナタ第28番イ長調~第3楽章

◇自主練
・チェルニー『毎日の練習曲』3番

◇憧れの無謀曲 寝かせ中
・リスト『バラード 第2番』
・シューマン『幻想曲』第2楽章

◇2020年の終了曲
・シューマン 3つのロマンス~第2番 嬰へ短調 Op.28-2
・バッハ 平均律第1巻17番 変イ長調

◇2019年の終了曲
・チェルニー30-23番
・チェルニー40-27、28、29、30番
・チェルニー左手24-19番
・バッハ シンフォニア14番、12番、7番
・ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第10番ト長調~第1楽章
・ショパン『幻想即興曲』
・メンデルスゾーン『春の歌』

リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ご訪問者さまに感謝♥
にほんブログ村参加中
にほんブログ村 クラシックブログ ピアノへ
クリックよろしくお願いします<(_ _)>

検索フォーム
RSSリンクの表示
QRコード
QR